平成29年9月23日(土)&24日(日) くもり 熊本地震発生から528日、529日。 動物資料館で開催した動物愛護週間のプログラムより 3つのパネル展示&ガイドを紹介いたします。 1つ目は 「戦争と動物園」。 熊本市動植物園は、開園88年目。 昨年の熊本地震で休園をよぎなくされましたが 実は、これがはじめてではありませんでした。
太平洋戦争。 この時を生きた方々は、少なくなってきました。 このとき、園で何が起きていたのかを 現存する貴重な資料とともに、伝えていかなければいけません。
戦時下の動物たちの様子や飼育員の葛藤 猛獣処分命令がくだったときの状況
当時飼養されていたインドゾウをモデルとしてつくられた絵本・DVDや その頭骨などの展示物もご覧いただきます。
わたしたちヒトの犠牲になった動物たちのことを知り 戦争に対する反省を込めて、二度と起ることがないように 伝承していく必要があります。
2日目には、インドゾウのエリーの骨を寄贈してくださった方が ご来園されました。
当時の飼育スタッフのご家族で 「骨が残っていてよかった」と仰られていました。 今後も、伝承していく上で貴重な遺品を大切にしてまいります。 足をお運びくださり、ありがとうございました!
2つ目は 「どうぶつの乱獲や違法捕獲と日本とのかかわり」
ここでは、日本と深いかかわりのあるアフリカの動物3種類を とりあげてパネル展示を行いました。
さらに、1日目は 当園のインドホシガメを紹介。
インドホシガメは、都市や農地開発、伐採による生息地の破壊のほか ペット用の乱獲などによっても、生息数が減少しています。
ワシントン条約により 生息地からの正規輸出はほぼ停止しているにもかかわらず 日本で密輸(みつゆ)が摘発された例もあります。
正規ルートで入ってくる数よりも ペットショップなどで販売されているインドホシガメの数が多く 密輸(みつゆ)の可能性が高いとされています。 本来分布していないはずの第三国へ密輸された個体が その国での野生個体もしくは飼育下繁殖個体として 流通しているおそれもあります。
そして、そのペットとして飼養していた動物を 捨ててしまうヒトもいます。 当園のインドホシガメは、警察で拾得物として保管されていた個体です。 「命」について、もう一度日本人も考えてみるべきではないでしょうか。
2日目。
パネル展示にもあるヨウムのヨウちゃんが登場します。 ふだんくらしている管理センターから出発!
今日は、どこに行くのかしら。
動物資料館に到着。 落ち着かないかなと思いましたが 飼育担当スタッフもいっしょなので、ヨウは落ち着いていました。 まずは、ヨウムについての紹介。 知能が高くて、ヒトとのコミュニケーションも可能。 音の物まねも得意なため、日本でもペットとしての人気が高いです。
ヨウちゃんも、たくさんの言葉を話します。 他の鳥の鳴きまね、内線の音、ヒトの声、ドアの開閉音・・・様々です。 落花生をもらってご機嫌です。
実は、このヨウちゃんも、インドホシガメと同様に警察署で保管されていて 当園で預かった個体です。 当園にきたときから日本語を一部口にしていましたので どこかでペットとして飼養されていたのでしょう。 ヨウムの生息地は、アフリカ。 実は、現地ではすさまじい数のヨウムが乱獲されており 身動きのとれないようなせまい場所に押し込められて運ばれ 先進国へ密輸されていることが多いのです。 捕獲の仕方も粘着性の高いものを使うため からだが傷つき、それで亡くなる個体もいるそうです。
今回は、先進国へペットとして密輸されるヨウム、 実験やペット・ショー目的などのために先進国へ輸出されるチンパンジー、 象牙から印鑑・楽器の撥(ばち)・アクセサリーなどをつくるために 倒されるアフリカゾウの3種類の動物について 日本のかかわりが大きいため紹介しました。 当園にいるチンパンジーの中には、以前製薬会社のワクチン開発の ために日本に連れてこられた個体もいます。 今なお、そのからだに残る無数の散弾銃のレントゲン写真も紹介。 小さいこどものチンパンジーを捕獲するために 周りでこどもを守ろうとする群れの大人のチンパンジーが 何十人も倒されてしまうのです。 今は、動物の福祉についての考えが普及して 実験動物として日本にやってきたチンパンジーの生活環境を整備し 余生をしあわせにおくれるようにと各施設がつとめています。
象牙の利用は、日本では奈良時代にさかのぼります。 当初は、自然死したゾウから牙をもらっていましたが 銃器の発達、航海術の発達により ゾウを倒して牙をとり、輸出するというルートができました。 日本は、国際取引にさまざまな制限がかかる 種の保存のためのワシントン条約の締結国となるまで 一時期、世界で最も象牙輸入の多い国となっていたのです。 今回のパネル展とガイドは わたしたち日本人が、自分たちのくらしをゆたかにするために 様々な動物に犠牲をしいてきたという歴史をまず知り これからは、動物の福祉のもと ヒトと動物とが共生できる社会の実現を目指して それぞれが考えれる一助となれば幸いです。
3つ目は 「熊本地震で被災した熊本市動植物園のどうぶつたち」。
給排水管の破損で水の供給がストップし 江津湖湧水地から水をくんできて対応した獣舎。 獣舎の傾きに寄って、園内移動した動物たち。 獣舎破損によって、園外へ預かっていただいている動物たち。 寝室で被災したことによって 寝室に入ることをこわがり、食べれなくなった動物たち。
熊本地震発生時、皆さんは何をしていたでしょうか。 そのとき、どういう行動をとったでしょうか。 ヒトの記憶というものは、少しずつうろ覚えになっていくものですが それを記録しておくことで、次世代に伝えていくことができます。
どんなことが起きたときに、どういう対応をしたらよいか それを知っておくことは、とても大事です。
わたしたち動植物園の被災状況やその対応方法を 他の園館に伝えておくことで 必要物資をそろえておくことができるし どういう応援要請が大きな援助になるのかもわかります。
また、精神的に大きな影響を受けた動物たちのために 同様に被災した飼育スタッフたちが必死に考えて行ってきたこと。 それは、被災した家族、友人、隣人、避難所で会った方々のために 自分にできることが何かを考えて 皆さんが尽くしてくださったことと共通するものではないでしょうか。
震災についての知識、経験、物理的・精神的な支え合いは 震災への大きな強みとなり、立ち上がれる力となると考えています。
動物愛護週間は本当に短い期間ですが 動物福祉の基本理念をもって ここで見聞きしたことを、くらしの糧にしていただければ幸いです。 一安、上野、鎌田、古屋、白濱、福本、藤原、松﨑、松本 充史、吉仲
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