平成29年11月1日(水) 熊本地震発生から567日。 早朝、小春(左)と秋平(右)だけ外の放飼場に出て 冬真は寝室で待機しています。 マサイキリンの飼育スタッフが持っているのは 宮崎へ婿入りする冬真へ 熊本市動植物園に来園された方々からの寄せ書き(↓)
あたたかいことばが、たくさんつめこまれています。 皆さま、ありがとうございました! この寄せ書きは、冬真と一緒に 宮崎市フェニックス自然動物園へ届けられます。
こちらは、寝室で待機中の冬真(↓)。
今日は何かあると、察知している様子。
キリン舎の周りは、まだ配水管の工事中(↓)
9:00 スタッフ全員集合。 これからの役割分担、配置、段取りを確認します。
各担当に、操作の説明。
キリンの移送経験者を中心に、事故のないように慎重にすばやく 周囲を確認しながら操作することが大事です。
こちらは、冬真の寝室。 扉を開放、移送箱が奥に見えますが 冬真は入る気配ありません。
放飼場にも馴らすために移送箱を約5週間置いていたのですが 慎重派な冬真は一度も入らず☆ 秋平は、その間何度も箱に入っていたのに・・・(^^;) しかも、冬真はこの部屋の奥扉から出れたことがなく 右扉を使うのみです。 そのまま箱に入るのは、まずありません。 というわけで、ブルーシート登場。
手前からたらし、奥までブルーシートを動かしていくという作戦。
なになに、なにが起こるの?と立ち尽くす 冬真の後ろ上方にロープをはっていて これで片側のブルーシートを動かします。
とりつけて・・・
いざ、慎重に!
え、なになになに~? ブルーシートの奥を覗き込もうとする冬真。
えーっ
はじめは、ブルーシートの手前を 上方で1人が持って移動するというやり方でしたが 冬真が、いやいや~っっと向きを変えて ブルーシートを前脚でたたきます。
そして、壁の隅で「いない、いない」
少し、外を見て
やっぱりいやーっ
ブルーシートと壁との間に隙間ができて 冬真が戻ってこようとします。 そこで、奥壁の窓から棒でブルーシートの端を押さえます。
外から見ると、こんな状態になっています。 不安定な態勢になるので、補助も数人。
こちらは、冬真が箱に飛び込んできたときに 横から棒を差し込んで、逆流防止を行うために待機中のスタッフ(↓)。
いつ入るかわからないので、緊張感をずっと保っているのも大変。 ボルト締めのスタッフも待機。
中の様子がわからないので いまかいまかと待つスタッフ。
こちらも、逆側から棒を差し込むために待機中。
この体勢維持も大変。 報道者の方々も見守る中・・・
冬真は ・ ・ ・ ふんばっていた!
一度ブルーシートの隙間から抜けて戻られたので 2回目以降は、上下の左右2箇所ずつからひっぱって 冬真の力に耐えます(↓)。
壁際に行こうとする冬真の肩口を ブルーシートの後ろから押して体制を整えます。 そのため、冬真のいる寝室に数人入ることになり
後ろから押すスタッフがケガしないように ブルーシートを支え持っているスタッフたちも踏ん張ります。
冬真もふんばる。
最後は、疲れてきた冬真の顔に はずれたブルーシートがうまくかぶさり 前が見えない冬真が踏ん張りどころがわからなくなったところを いっせいに皆で押し進めました。
冬真が箱に入り、急いで扉を閉めて
外の放飼場では、すぐに棒を差し込み、扉を固定していきます。
冬真は箱の上から作業の様子を見て、少しおろおろ。
なになに、どうなるのーっ?
着々とボルトが締められていき
兄ちゃん、どしたー? 見に来る秋平。
外で待機していたスタッフも疲労を見せずに てきぱきと作業をすすめます。
下から見ると、あんなに小さかった冬真も こんなに大きくなったんだなぁと 走馬灯のように、生まれた日を思い出します。
あのときは、タツノオトシゴのような姿だった・・・ いや、もちろん、そんなに小さくはないけれど ぺたん、と立てずに座り込んで 頚だけもたげていたときの雰囲気が☆ さて、冬真の頭の高さまでのぼって、冬真の目線を実感。
上のボルトもしっかり固定。
後ろを振り返ると、小春(左)と秋平(右)が 江津湖をバックに、じっと冬真の様子を見守っていました。
お別れにかけつけてきたスタッフたちも。
遠くから見守っていました。
ボルト締めが終わると、四方から支えていた棒を取り外していきます。
作業が気になる冬真。
ここから、移動のために箱に目隠しを行います。 道中、驚いてパニックにならないように配慮。
長い頚が伸ばせるように、箱には出窓のように 前方にゆとりができています。 小春と秋平も、冬真とこれでお別れ。 寝室に、いったん戻ります。
これから、親子2人きりでのくらしになります。
箱の天井のシートは、しっかりロープで固定していきます。
移送箱ができあがると、クレーン車が放飼場に入ります。
にょきにょきにょきーっ
箱の重心を確認しながら
そっと、ゆっくり吊り上げていきます。
よいしょーっ
すすすーっと放飼場の上を移動して
移送トラックへ。
再び、みょーん。
慎重に、慎重に・・・
完了!
おぉ、いつの間にか見送りスタッフが増えていました。
スタッフの向こう、「キリンの見える散歩道」にも たくさんの方々が見送りにかけつけておられました(↓)。 車が動き出すと、「冬真くん、元気でねーっ」 という声がかけられました。
移送車が、出ていきます。
いったん、ゾウ舎前でストップ。
アフリカゾウのマリーとエリが大興奮。
エリは、扉前のしきりに牙をひっかけて がんがん上下に揺らします。
マリーは、移送車めがけて放飼場を走ってきます。
アフリカゾウは、においにも敏感。 移送車に入っている冬真のにおいがわかるのでしょう。 しきりに、そちらに鼻を向けて確認していました。
マリー、エリ、冬真は花嫁のところにいくんだよ。 さびしくなるけど、きっと新しい家族をつくって 楽しくくらしてくれるよ。 移送車は、事務所前へ。
スタッフも、冬真にお別れを言いに集まります。
元気で。
元気で。
どうか、しあわせに。
きっと、会いに行くよ。
冬真は、冬の寒い日にリキと高齢の母(ラン)から生まれて その後、まもなく熊本地震、さらに母の死を経験しています。 しかし、8ヶ月ほどの短期間とはいえ 母の深い愛情に包まれてすくすくと育ち、やさしい小春にもなつき 弟(父 故:リキ、母:小春)の秋平が生まれてからは とても面倒見の良いお兄ちゃんとして一緒に遊び のびのびと元気にくらしていました。 冬真の愛らしい姿に、元気をもらった方も多いことでしょう。 冬真、今までありがとう! これから出会う新しい家族と一緒に、元気でね。
宮崎の皆さま、冬真をよろしくお願いいたします。 熊本市動植物園スタッフ一同 |