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飼育ブログ

動物だよりvol.96世界動物の日~World Animal Day~

2016年10月4日(火)

平成28年10月4日(火)

 

熊本地震発生から143日。

 

10月4日は、「世界動物の日」

 

皆さんは、この日をご存知でしょうか。

 

 

 

今から約90年ほど前、動物に対して行われていた非人道的行為に対して 

1931年に開催された国際動物保護会議によって設けられた 

世界の動物保護を目的とする日です。

 

 

はじめは、絶滅危惧種に焦点があてられていましたが

 今はその枠を超えて、世界の動物について考えて 

反省する時間をもちましょう、と

様々な動物の保護や愛護に関するイベント等が

世界中で行われるようになりました。

 

 

日本では、 まだなじみの少ない世界動物の日ですが

この日にちなんで、熊本市動植物園では

絶滅危惧種であるチンパンジーのことについて

いろんな方に知ってもらう機会として

昨年から、学べるイベントをはじめました。

 

 

残念ながら、まだ休園状態なので

お客様にきていただくことはできませんでしたが

ここで途絶えさせてはいけないと

取り組んだ内容を、こちらでご報告させていただきます。

用意したもの:季節の味覚

 

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ドングリ、クヌギ

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イガグリ

 

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ブドウ


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・・・は、種をくりぬき

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皮ごと容器に入れて

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ブーン、とミキサーで液状にします。

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はじめは、きれいなピンク色のジュースでしたが

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空気に触れると、あっという間に濃い色に☆(↓)

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これを、切り株や木の幹にあけた穴に流し込みます。

 

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毎週、ハチミツ水でやっているところに

天然のぶどうジュースを入れました。

気づいてはくれると思いますが

色的に・・・はたして飲んでくれるでしょうか。

 

柿の実は、本来、木になる実なので

枝や消防ホースに吊るして、実のなる木にしました。

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栗は、木になっている状態と

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地面に落下したドングリ、クヌギ、栗をイメージして

敷き詰めた落ち葉の合間にのぞくようにしました。

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食べ物を、本来の自然環境にある形に近い状態にセットすることで

チンパンジー達には環境エンリッチメント(豊かなくらし)を提供できます。

わたしたちは、そこからチンパンジーたちの生態や行動について知り

人間にもっとも近いチンパンジー達の行動と

わたしたち人間の行動とを比較することで

逆に人間らしさとは何かに気づく、大きな機会を設けることにもなります。

これから入ってくる5人(※)のチンパンジー達は

もちろん1人1人違う個性を持っているし、育った環境も違います。

似ているようで、違った行動をみることができます。

(※チンパンジーは人間と同じヒト科で、「人(にん)」という単位。) 

 

最初に入ってきたのは

なにかごちそうを準備しているみたいだぞと

テンション高かったマルク。

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ぐるっと周りをみて、急いで移動。 

他の4人も、次々入ってきて、まず皆が手にしたのは、柿。

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片手で身軽にポールや消防ホースにぶら下がります(↑↓)。

彼らは何かにぶらさがるのが、大変得意です。

掌と人差し指から小指までが大きく長く発達しており

握力は約200~300kgもあるといわれています。

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チンパンジーたちは、わたしたちと同様に2本足で歩けます。

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高い木になる実をとるのに、切り株を利用してその上に立ち上がり

手でとって食べます。

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消防ホースにバランスよく腰かけていますが(↓)

下が不安定なところでも

片手でつかまれるものが上方にあれば

そこで体を安定させることができます。

 

ちなみに、上につかまれるところがなければ

下が不安定なところには長居はしません。

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柿がなくなると、落ち葉の間のクリ、クヌギへ。

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皆が、落ちている実に反応する中

柿の実をたっぷり確保していたユウコは、1人柿を満喫。

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こういうところにも、育った環境の違いや個性が出ます。

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そして、おいしい実の探索が始まった頃

へへへ。

マルクは、天然ぶどうジュースのもとへ。

ちょっと嬉しそうなゆるんだ表情をしていますね(↓)。

 

チンパンジーは、わたしたち人間と同様に

喜怒哀楽、緊張、恐怖など様々な感情が

顔の表情として出てきます。


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わたしたちが、コップのジュースを飲むのにストローを使うように

深い穴に入っている液体を飲む方法として

彼らは自分達で用意した道具を使います。

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小さい頃は、本来の生息地であるアフリカのチンパンジー達の

群れ社会の中でくらしており、生きていく術を学んだマルクたちは

折ってきた枝の先を口でほぐして繊維を出し

いわゆるスポンジ状にします。

それを穴の中に差し入れて、水分を含ませて飲みます。


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あーん♪


そして、マルクの指先に注目を(↑)。

わたし達が何かに手をついて体重をかけるときは

指を伸ばして、指の腹をつけますよね。

赤ちゃんのハイハイを思い出してください。

 

チンパンジーは、マルクに限らず、指を曲げたまま手をつきます。

カナエのお尻の後ろで、ぶどうジュースを飲んでいるマルクの右手指が

伸びていないのがわかるでしょうか。

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さて、こちらは今からブドウまつりに参加しようと

スタンバイしているクッキー(↓)。

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日本生まれの人工哺育育ちのクッキーも

チンパンジーの群れ社会に戻ったことで

周りのチンパンジーたちから、多くのことを学ぶことができました。

枝の使い方も、その1つ。

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クッキーの表情も、緩んでいますね(↓)。

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さて、ここで先程チンパンジーは4本の指が発達していると紹介しました。

残りの親指は、どうなっているでしょうか?(↑)

長さをみてもらえると、わかりますね。

チンパンジーの指は、何かにぶら下がるために4本の指が発達しており

わたしたち人間とは異なります。

わたしたちは、親指をどのように使っているでしょうか。

意識したことは、ありますか?

何かをつまむときに、わたしたちは親指と人差し指を使いますよね。

 

チンパンジーたちは、わたしたちのように親指と人差し指の先を合わせて

つまむということは、その指の構造上、困難です。

親指を掌に沿わせるようにして、その間に物をはさみこんだり

人差し指でひっかけたりしています。

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マルクは、人差し指に枝をひっかけて持ち

クッキーは握りこんで持っています。

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カナエは、一見人差し指と親指でクリをつまんでいるように見えますが(↓)

人差し指でくるんで、親指は沿わせているだけです。

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このカナエは、人差し指と親指の間にはさみこむようにもっています(↓)。

 

1

 

ノゾミも、人差し指と親指の間にはさみこむようにもっています(↓)。

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ちなみに、足の指にもご注目を(↑)。

わたしたち人間の指より、長く発達していますね。

とくにこの親指!

チンパンジーは、この親指と人差し指で

ぐるっと物をつかむことができるんです。

木登りに適した手足なんですね。

 

チンパンジーは、アフリカの現地では木の上と地面の両方で

くらしています。

 

食べ物は、木の実、枝、葉、花、果物、小さい小動物、昆虫など。

三次元に、広範囲で多種多様なものを探して食べるくらしをしています。

 

そして、寝るときは、木の上に枝葉などをおりこんで

ベッドをつくって寝るんですよ。

 

チンパンジーの手足の発達は、そんなくらしからきているんですね。


さて、ここからおいしいクリの食べ方をご紹介。

ナビゲーターは、ノゾミ(↓)

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指で握りこんだクリの皮を、歯と唇を使って上手にむいていきます。

外側の硬い皮がむけたら・・・

パクン!

 

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おいしいのだ!

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カナエは、まだまだブドウまつりの参加者で

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他では、クリとクヌギ拾いが、はじまりましたよ。

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クッキーも、落ちているクヌギをゲット。

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さて、先程のぶどうジュース。

先に、丸太の場所で、クッキーとカナエが飲んでいるところに

あとからマルクが仲良く入ってきたかのようにみえますが
実は、こんな経緯がありました。

 

まず、クッキーが別の場所にあった切り株のぶどうジュースに気づき

カナエも、枝を用意していました。


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そこに、ささーっと間に入ってきたのが、マルク。

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紳士なマルクは、どこいったんだ!

 

ここはやりにくい、とばかりに

さっさとはなれていくカナエとクッキー。

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カナエとクッキーは、奥の丸太の穴に流し込んだぶどうジュースへ。

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マルクは、手前でかしゃかしゃ。

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手のかけ方が、誰にも渡さんぞーっ、と物語っています。

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ひとり占めで満喫☆

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ある程度飲み干すと

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カナエとクッキーの間に割り込み。

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めっちゃ、クッキーの穴をガン見。

いやいや、そこは取り上げないであげてね。

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平和にはじまる、しゃかしゃかブドウまつり。

あの仲良さそうな光景の中には、前段があったのです☆

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そんな中、一番最初に、イガグリに挑戦したのは、ユウコ。


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指で、つんつん。

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マルクのところから、逃れるように移動してきたカナエたちが

ブドウまつの続きを堪能する中

ユウコだけが、イガグリに関心を持ちました。

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ユウコ、ついにイガグリを拾う。

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カナエが去ったあとも、クッキーは、ブドウまつり中(↓)。

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マルクが飲んだあとの切り株の穴にも

枝をさしこんで口までもっていきましたが

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?!

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どうやら、マルクに飲み干されていたようで

穴をガン見☆

 

その頃、カナエはクリを食べつつ(↓)

まだブドウまつりの余韻から帰ってきていないのか、枝は離さず。

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マルクも、やっと落ち葉の隙間に落ちているクリへ。


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これ、うまいな~、味わうマルク。


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ユウコは、おいしいクリがイガの中にあることを知っている。


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興味を示すのが早かったので、ユウコをはっていたら

案の定、イガグリへの挑戦者一号でした(^^)。

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握りしめることはせず、そっと掌においた状態で運びます。

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んふふ。

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嬉しそうに、持ってきました。

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そして、どうやって中身をとりだすのかを披露。

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両手の親指を、イガグリの隙間に入れて慎重に開きます。

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クリが姿をあらわすと

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これまた慎重に、口も使ってとりだしました。

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続けざまに、中に入っていたクリ3個ゲット。

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食べてしまうと、すぐにお隣のイガグリへ。

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わざわざ、こっちに見せてくれるユウコ。

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ちゃんとおぼえて、やってみなさいよ~

といわれている気がします。

ノゾミも、真剣にイガグリに挑戦。

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人差し指で、そーっとそーっと開きます。

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思わず、肩に力が入ってしまっています。

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器用なノゾミは、中身がみえるまで開くのは早い。

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ゲットです!

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ぱくん!

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ガラス越しで聴き取りにくいですが

オオウ、オオウ、と彼女の喜びの声をだしているんだろうな。

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じーっと見ていると、気づいたノゾミが振り返ります。

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ほしいなら、自分でやらなきゃね~

なんだか見せびらかされている気もしてきました(^^;)

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クッキーは、イガグリにちょっとさわったものの・・・あいた!

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むく作業は、彼女にはむずかしかったかも。

このあと、むいてみようとチャレンジする姿は見られませんでした。

 

一方、ぶどうまつりに目まぐるしく参加していたマルクは

丸太の上で、イガグリに挑戦!

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親指と人差し指を器用に使って、中身を取り出すと

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あーん♪

一度、イガグリフィーバーに突入すると、止まりません。

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お次は、落ち葉の上で。

こっちも。

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そっちも。

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まずは、イガグリの隙間を上にして

右手の親指と、左手の人差し指をさしこんで

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ぐぐーっと横に開くべし!

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開いた隙間に、別の指を入れて

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慎重に、慎重に。

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カナエは、ぶどうまつりの参加時間が長かったのと

他のメンバーのようなアピールがなかったので

気づくのにおくれてしまいましたが

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いつの間にか、イガグリに移行していました。

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こちらも、指で隙間を開いて、クリを取り出すと

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ぱくん。


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控えめに、喜んでくれているようです(^○^)

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イガグリの上手な剥き方(マルク編)↓


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棘がささらないように、イガの隙間に

右手の親指と左手の人差し指を差し込んで

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そーっと、そーっと、開いていきます。

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隙間を大きくあけたら、つやつやしたクリをとりだして

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ぱくん!

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やめられません!

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真剣な表情と手つきが素敵です♪

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左手でおさえて


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右手指でゆっくりと隙間を広げていく。

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広げた隙間から、またまた慎重にクリをひっぱりだして

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マルク、完璧!


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うんうん、今年のクリもおいしいね!

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もう、やみつきですたい(^▽^)

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さて、ここまでみていただいて、いかがだったでしょうか。

どのように食べたり飲んだりするのか

彼らの生態や行動と一緒に紹介いたしました。

 

飲み物1つでも、チンパンジーは、頭をつかい、道具をつかい

それにかけた時間を楽しんでいます。

落ち葉の中の実を探すのも、イガグリからクリを取り出すのも

時間がかかるのに、真剣に取り組んで、やはりそれを楽しんでいます。

 

彼らにとって退屈な時間をいかに減らして

くらしをどうやったらゆたかにできるのか

わたしたち飼育員は、日々考えながら、彼らとくらしています。

 

 

昨年の10月4日は、絶滅危惧種としてのチンパンジーについて

現地の生息地破壊や密猟などによってその数が激減しており

それには人が大きく関わっているという内容を、まずお伝えしました。

そして、環境エンリッチメントを一緒に用意してもらって

実際にチンパンジーたちがどんな行動をとるのか

目の前でみていただきました。

 

 

皆さんは、動物園にくるときにどのような想いで来られますか?

珍しい動物を見るため?

赤ちゃん動物を見るため?

 

世界の珍しい動物も赤ちゃんも、動物園や現地に行かなくても

今は簡単に写真や映像を見ることができる時代です。

 

 

動物園の大きな役割の1つは、教育の場です。

 

わたしたち人間社会も様々な人種・環境から構成され

そこに、価値観、家族、宗教観、格差社会など様々な違いがでてきて

喜怒哀楽が生まれ、問題が生まれます。

 

動物園は、世界の 多種多様な動物達の社会や

群れ・親子関係などの一部をきりだしたものです。

形としてはみえないつながりの部分を

間近で見て、聞いて、嗅いで、知って、感じ、考えることで

そこに潜む問題にも気づくことができます。

 

また、わたしたち人間を知るために

他の動物たちをみて、比較したり重ねたりすることで

人間らしさというものも見えてきます。

 

 多種多様で複雑な動物達の世界を人間社会に投影し

その多種多様性な部分を結び付けたり比較することで

人間社会の問題への解決の糸口ともなる、学びの場所です。

 

 

熊本市動植物園は、今後も復興に向けて

一歩一歩、努力してまいります。

被害の少ない部分の一部開園も検討しています。

 

もし、足を運んでいただける機会がありましたら

ぜひ学びの場として、ご活用いただければ幸いです。

 

そして、この「世界動物の日」も

一緒に動物と人との様々な問題について

考えていただける機会になればと願っています。

 

 

 

上野 明日香、竹田 正志、福原 真治 

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