平成29年4月16日(日)晴れ 熊本地震発生から368日。 4月19日は 飼育(しいく)の日 当園がまだ土日しか開園できていないため 「飼育の日」ガイドを、16日に行いました。 本日は、熊本地震の本震から1年。 熊本地震で亡くなられた多くの方々に ご冥福をお祈り申し上げます。 熊本市の財産である動植物園でなにが起きたのかを 皆さんにも伝えておかなければと この「飼育の日」に、地震特集ガイドを行いました。 今は落ち着いて穏やかにくらしている アフリカゾウのマリーとエリにも その恐怖の瞬間は訪れました。
熊本地震発生から1時間後の22時半頃 他獣舎の見回りをしてきた飼育スタッフが アフリカゾウのエリアにたどりつきます。 その間、マリーとエリの目は充血 警戒して耳は前方にピンと開いたまま 寝室の床や壁に水下痢を跳ね飛ばし、右往左往していました。
ゾウ舎の反対側のエリア(モンキーアイランド~チンパンジー舎)が 最も大きな被害を受けましたが こちらの獣舎も、細かなヒビや外の配管の破損などがありました。 外に出しても安全かの確認がとれるまでの数日 マリーとエリは、寝室内で過ごすことを余儀なくされました。 その間、食欲も落ちましたが 放飼場に出れるようになると、落ち着きを取り戻し 食欲も戻って通常のくらしを送れるようになりました。 今は、とてものびのびすごしています。
さらに、本日のマサイキリンのガイドでも 震災当時、寝室でどんな様子だったかをお伝えしました。 寝室内で落ち着かず動き回り 放飼場に出ても余震がくると あわてて右往左往することもありました。 また、妊娠中だった小春(コハル)が熊本地震を乗り越えて生んだ 新しい命の秋平(シュウヘイ)についても話しました。 動物資料館のレクチャールームに 熊本地震の特集コーナーを設けておりますが この日は、飼育スタッフによる解説を行いました。
きかれることが多かった動物たちへの影響については 当時の動物たちの様子を 壊れた獣舎や通路の写真をまじえてお話しました。
ネコ科猛獣の獣舎は、寝室以外の部分に破損があり 他園館さんへ緊急移動いたしました。 (迅速に調整していただいた日動水の方々 受け入れてくださった方々、本当にありがとうございます!) 彼らの行き先である4園館さまからいただいたメッセージも 掲載しております。 獣舎全体が傾いて、園内の他獣舎へ移動した ワオキツネザルとクロクモザル。 震災時、プールの水に潜ったままのカバ。 (呼びかけても、30分以上潜ったままだった) 寝室で顔を擦り剥いた全頭のグラントシマウマたち。 大きな余震のたびに、わたしたちもはじめてきくような 警戒音を発しました。 (放飼場下の給配水管が破損、水が噴出して大きく地形が変形) 余震の度にいっせいに鳴くインドクジャクとシロクジャク。 小さな余震にも気づく彼らのおかげで 急いで担当動物のもとにかけつけることができました。 心的影響を大きく長く受けたのは、霊長類たちでした。 寝室で1週間も食欲廃絶したアンゴラコロブス。 数日下痢を繰り返して食欲低下したキンシコウ。 上方の格子にしがみついて、手指を擦り剥いたマンドリル。 震災時と同じ部屋や個室に対して 何ヶ月も不安様行動を繰り返すチンパンジー。 (SAGAで発表した、行動観察記録に基づくポスターを掲示しています) そんな彼らのために、飼育スタッフそれぞれが 担当動物のためにできることを考えて 動物たちが安心するように声をかけて ソフト面でもハード面でも、色々な工夫を行ってきました。
熊本地震発生時(4月14日の前震、16日の本震)の アフリカゾウのマリーとエリの映像や 余震発生時のチンパンジーのノゾミやユウコの行動 そして地震によって心的影響を長く受けた チンパンジーのクッキーがとった不安様行動も放映しました(↓)。
人間は、なぜ地震が起きるのか原理をわかっていますが 動物たちはわからない分、その恐怖は相当のものだったと思います。
もちろん、地震で怖い思いをしたのは動物だけではありません。 私たち人間も、とてもとても怖い思いをしました。 帰る家を失くし、大切な人を亡くし、笑顔を無くし・・・ 傷ついたこどもたちの心をいやしたい、笑顔を取り戻したい それが、ふれあい移動動物園をはじめたきっかけでした。
ふれあい移動動物園についても、特集を組んで掲載しております(↓)。
避難所となっていた春日小学校の校長先生と ふれあい移動動物園についてお話しする機会があり 5月26日、試験的に全校生徒を対象に実施しました。 モルモット、ウサギ、ムツアシガメのタッチング ヒツジの毛刈り(ヒツジの毛の重さ当て)。
その後、5月~12月まで市内の幼稚園、保育園、盲学校を含め 43校(5/31~6/8:24校、9/3~12/8:19校)におもむきました。
たくさんのこどもたちと動物たちとがふれあい そこには、動植物園から消えたこどもたちの明るい声や笑顔が あふれていました。 こどもたちを元気づけたい! そんな思いで行ったはずなのに 気がつけば、こどもたちの笑顔に元気をもらっていたのは 飼育スタッフ達でした。
動植物園とはどうあるべきか もう一度見つめなおし、考えさせられた日々でした。 移動動物園を実施した先の小学校や幼稚園、盲学校の皆さんから たくさんのお手紙などをいただいております。 そちらも、4月末まで掲載しておりますので、ぜひご覧ください。 ・ ・ ・ 午後からは、スライドを使って 1年前の4月14日、たまたまヤギの哺乳のため残っていたため 動植物園で被災した職員が、自分の体験を含めて 熊本地震発生時の動植物園の状況や対応を 部分開園に至るまで時系列で伝えていきました。
熊本県の方も、県外から来ていただいた方も 真剣にみて、きいておられました。
講演後、熊本地震発生日の14日に来園したという方から
「あそこがああなってしまったんだね・・・ 本当にお昼に地震がこなくて良かったね」 というご感想をいただいたり 「最近、熊本でまた余震が続いているでしょ。 地震から1年たってテレビでも取り上げられることが増えたしね。 こどもが思いだして怖がってね、いっしょに寝たがるのよ」と いまだ続く余震などに、お子さんが影響されている話をされる方も。 「動物もとても怖かっただろうけど、飼育員さんたちがいたから 動物も安心しただろうね、ご苦労様でした」と 声をかけてくださる方もいらっしゃいました。 飼育スタッフも、後ろで当時の状況を思い出しながら きいていました。
この1年、皆さん、どのように過ごしてこられたでしょうか。 それぞれ、いろいろなことがあったと思います。 あのとき、あのあと 泣き、悩み、周りの人たちに支えられて 懸命に生きてきた1年だったと思います。 熊本地震から1年、震災を振り返る節目として 精神的にも物理的にも震災から学んだことはたくさんあります。 様々な形で、応援・支援してくださっている皆さま 深く、深く、感謝申し上げます。 また、動植物園復興応援サポーターの皆さま 動植物園の復興にご協力いただきまして 誠にありがとうございます。 来週末から被災地見学会を行います。 詳細は、HPの「園からのお知らせ」または 「新着情報」の「一覧へ」をクリックして、ご覧ください。 これからも、動植物園は復興と全面開園に向けて 全力でがんばってまいります! 一安、上野、北川、草野、平瀬、福原 福本、松本 充史、松本 直美、吉仲 |