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動物だよりvol.284市現代美術館の【がんばれ、アニマルズ!】

2017年8月21日(月)

平成29年8月20日(日)晴れ

 

熊本地震発生から494日。

 

熊本市現代美術館と動植物園とのコラボ企画に行ってきました!

 

現在、熊本市現代美術館ではどうぶつをモチーフとした

「三沢厚彦 ANIMALS in 熊本」が、開催されています。

 

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それに合わせた今回のコラボ企画は

熊本市動植物園 復興応援企画「がんばれ!アニマルズ」です。

美術館学芸員の坂本 顕子さんより

熊本地震で被災した熊本市動植物園を応援したいという想いから

動植物園にお声をかけていただいたことで実現しました。

 

とくに、今回は熊本であるということで

三沢さんの作品の中から、クマをごっそりもってきていただいたそうで

「クマ部屋」なんて場所もあるんですよ☆

 

さて、この日午前中に行ったのは「スペシャル・ギャラリートーク」

美術館の学芸員と動植物園の獣医師とで展示部屋をめぐりながら

作品とそれに関わることを、対話しながら説明していきます。

 

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展示作品の素材や詳細な説明は、学芸員の坂本さんが話されて

三沢さんの作品と熊本市動植物園にいる動物が重なるときは

動物のからだのしくみ、生態、行動、作品にも通じる部分などを

獣医師の上野が話して行くという対話形式のトークギャラリーです。

 

日曜、しかも夏休みということで、たくさんの方々が参加されました。

 

ユニークで造詣深い学芸員さんの話は面白く

三沢さんの初期の作品からはじまり

(この頃は、ヒトもモチーフとされています)


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廃材をあつめてつくられたウマグマもおりました。

三沢さんの展示には、開催初日もいきまして

「え、ウマグマ?!」と二度見したのをおぼえています(^^)

 

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当園には、奇しくも、そして、珍しくも

ウマグマのコジロウ(♂)がいるので

せっかくなら、アートの見本となった実物も知って欲しいなと

コジロウの写真もお見せして

ウマグマについての生息環境、生態、行動などの話から

ヒグマ全体の話、コジロウの話もまじえながらお伝えしました。

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さらに、三沢さんは彫刻だけでなく

こんな絵画も描かれています。

 

家にあったら、明るく楽しくなりそうな作品です。

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どうぶつ達の絵画はかなりの点数あり

誰しもが、「あ、このどうぶつ知っている!」というメジャーなどうぶつも

「おぉ、これを描きますか~」というあまり知られていないどうぶつも

もりだくさんです!

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自然界で生息している野生動物だけではなくて

わたしたちに身近なペットとしてのイヌやネコ

家畜としてのブタなどもありました。

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三沢さんの作品は、1枚のキャンパスに描いているのではなく

描き出したけれど、あ、まだ描こう、継ぎ足そうと

何枚も継ぎ足して描かれているのもあるそうです。

そんなエピソードをきくだけで

三沢さんの感性の自由さ、大らかさが伝わってきます。

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展示手法もユニークで

上のほうに、ぴょこっとコウモリの絵画があったり

あ、角っこにイヌ発見!など

作品だけでなく、空間全体を楽しめるようになっています。

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こちらが、通称「クマ部屋」

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足元にホッキョクグマのこどもも転がっていて

思わずふれたくなりますが、作品にはさわれません(><)↑

 

ヒグマの巨大な爪(↓)も、思わずふれたくなりますが

ぐっとがまん!

 

本物のクマも、もちろんさわってはいけません!

大変、危険です!!

 

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ここでは、日本のヒグマやツキノワグマの生息環境をはじめ

展示物のクマの立ち姿をみてもらいながら

からだのしくみ、生態、行動、山でクマに出会ったら編もお伝えしました。

出会わないのが1番なので

冬眠明けの2月~春先にかけては、むやみに生息域に入らない

音の出るものを身につけていく、なども大事ですね。

 

熊本には、現在クマはいません。

あ、熊本市動植物園や阿蘇のカドリー・ドミニオン

ゆるキャラのくまモンは別としてですね☆

自然界では、九州のクマは絶滅したと言われています。

北海道にエゾヒグマ、本州にツキノワグマと棲み分けができています。

坂本さんとお客さんたちから、色々ご質問もいただいて

こちらもできるかぎり、質問にこたえさせていただきました。


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クマがこんなふうに立つことは本当にあるんですか?

というご質問もいただいたので

クマの後ろ足は、犬や猫のようにつま先でたっているのではなく

人間のようにかかとまで床につけるので立っても安定していることや

どういうときに立つのかも、お伝えしました。

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また、ヒグマはとても発達した前あしをもっていて

肩甲骨のラインが腰骨よりも高くなっています。

その強靭な前あしが、強力な武器にもなるし

前あしでエサを持って口に運ぶこともできる、という話もしました。


 

さて、次の部屋は・・・架空のどうぶつ、ユニコーン!

巨大でした!!

 

三沢さんのどうぶつに対する畏敬の念や想いが伝わってきます。

白いどうぶつの部屋は

神秘的な空間をかもしだしています。


残念ながら、当園にはユニコーンはいませんが

きっと、いろんなヒトの心の中に息づいている生命です。

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こちらは、ホワイトライオン・・・すごいたてがみの色です☆

 

ユニコーンとライオンが向かい合っていて

不思議な空間です。

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当園には、ライオンはいますが、通常の黄土色のライオン。

現在、九州自然動物公園に預かっていただいている「サン」です。

せっかくなので、ここではライオンについての話を。


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ライオンは、「百獣の王」として知られていますが

ヨーロッパでは、ライオンの存在が知られる前は

クマの絵を描いて権力の対象としており、旗や紋章、町の名前などにも

使用されていました。

ライオンも、多くのいきものと同様に

アフリカからヨーロッパ、ユーラシア大陸、北アメリカに

生息域が広がりましたが

現在の生息域は、アフリカのサバンナとインドの一部のみ。

なぜ、北アメリカで絶滅したのかや

大型ネコ科の中では、唯一むれをつくってくらすどうぶつであること

そのくらしぶりについてもふれました。

 

また、ネコ科動物の中では唯一、性別二型(雌雄で姿が異なる)で

オスには「たてがみ」があります。

たてがみがある理由や、その長さが生息場所によって違う理由など

諸説とりまぜながら、お伝えしました。

また、ネコといえば静かに歩く肉球の持ち主。

ライオンの肉球の感触やクマの肉球の感触についても

身近なものにたとえて伝えると

なるほど、とうなずかれている方もおられました。

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この小部屋も、素敵でした(↓)。

動物、鳥、爬虫類、両生類などの絵がたくさん!

あれ、これなんだっけと悩む生命体も☆

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ペガサス、鳳凰、こちらも白いどうぶつ達で

空想上のどうぶつ達もいる部屋です。

大きなどうぶつ達に混ざって
奥にちょこんと、白いウサギが座っていました☆


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ここでは、坂本さんから

三沢さんの作品の素材は樟(クスノキ)であることが伝えられました。

クスノキといえば、熊本県を代表する県木でもあり

県内にはたくさん大木もみられますよね。

樟は防虫効果があって

服の樟脳(しょうのう)も樟からつくられているんですよという話に

たくさんの方がうなずかれていました。

 

当園にもクスノキはたくさんあるのですが

防虫効果もあるように薬効性の高いものですので

どうぶつたちのエサにはしていません(><)

枝葉を食べる草食動物(ゾウ、マサイキリン、ヤギなど)には

カシ、ゾウには孟宗竹も与えています。

霊長類(チンパンジー、キンシコウなど)には

カシ、サクラ、ケヤキ、キンモクセイ

トウネズミモチ、カジノキ、ビワ、イヌビワ、マサキなど様々です。


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最後の大部屋(↓)。

ここは、中央のワニを中心に

ゾウ、キリン、ユキヒョウ、シカなど、当園にも縁のあるどうぶつ達が

かなりいました。

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せっかくなので、当園にいるワニの仲間のメガネカイマンについて

水中のとき、からだの背中側・おなか側の3種類の写真を見てもらい

口を閉じたときの歯のかみ合わせの話から

ワニの種類の見分け方や

治療するときの保定の仕方、注射をうつ場所についてもレクチャー。

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背中とおなかでは、色も形も、堅さもさわり心地も違うこと

三沢さんの作品にもあらわされていますが

残念ながら、作品にはさわることができないし

本物にもさわる機会はめったにありません。

 

そこで、当園でメガネカイマンを実際に解剖したときに

洗って乾かしておいた背中と腹部の皮膚の一部をおみせして

さわってみたい方には実際にさわっていただきました。

 

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また、お客さんから、ワニの足の指の数についてもきかれたので

三沢さんのワニの指は、アートなので両方5本ですが

実物は前5本、後ろ4本という話をしました。

 

出す機会あるかなと思って持参していた

メガネカイマンの孵化直前で孵る事ができなかった幼体を

おみせして、実際に数えてもらうと、前5本、後ろ4本。

とても熱心にみてきいてくれるお客さんたちで

こちらも、とても嬉しかったです。

幼体には縞模様があるけど、成体になると消えることにも

気づかれて、感心してみていかれました。

 

 

最後に、ゾウ」について。

九州では当園でしかもうみることのできないアフリカゾウの話や

アジアゾウとのからだの違い、生息環境に適したからだに進化した話。

三沢さんの作品をみてもらいながら

特徴的な耳、皮膚、鼻、牙、暑さをのりきるために必須の泥パックなど

当園のマリーとエリの話もまじえながら

ここでも、長々と話させていただきました。


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さらに、広い音域の声や人間がきくことのできない超低周波音で

会話しているゾウのこと。
すぐれた聴覚と、遠くのわずかな地面の振動でも感知する能力をもち

2004年のスマトラ沖地震のときには観光客をのせたゾウが

1時間も前に察知して、海岸から高台に移動して無事だったこと。

むれでくらすメスのリーダーの話

また、ゾウが鼻を相手の口の中に入れて情報を伝え合う話など

当園のマリーとエリの情報交換の様子も一緒にお伝えしました。

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午後には「熊本市動植物園はいま」というタイトルで

 昨年4月の熊本地震、長い休園時の動植物園でのできごと、

部分開園がはじまってから今にいたるまで、

さらに、今から88年前に当園が開園してから一時閉園にいたる経緯

太平洋戦争と猛獣殺処分命令についても話しました。

 

戦争の被害者であり、地震の被災者である動物たち。

人間の活動が、野生動物たちの生息域をせばめていっている現状。

 

このことを、少しでも多くの方が知り、伝えていただくことで

自分たち人間以外のことにも目を向けて

いきもののためにできることは何か

それはいきものたちの幸せにつながるのか

あらためて考える機会になればと願っています。

 

 

さて、ここからは今回の講演会とも関連しています。

 

宣伝です!(*^▽^*)

 

毎年、9月20日~9月26日は、動物愛護週間です。

9月23日(土)と24日(日)の開園日には

熊本市動植物園と熊本市動物愛護センターとの協同主催で

動物愛護にまつわる企画イベントを行います。

 

動植物園からは

戦争・震災でうけたどうぶつ達の影響、

自然界の野生動物たちの現状と人間活動との関連を

展示やガイドでお伝えする他、

ゾウふんはがきをアレンジした

動物のしおりづくり体験イベントもあります!

また、ふれあい広場では、命を感じるプログラムも用意!

 

近々、園内にポスター掲示予定です。

 

イベントの一部は、事前参加者募集になりますので

9月の市政だより、園HPの園からのお知らせ

園内ポスターなどで参加者を募る予定です。

 

もう少々、お待ちください。

 

 

 また、今回の復興応援企画

「顔はめ看板で遊ぼう」、「スペシャル・ギャラリートーク」、「講演会」の

動植物園との3つのコラボ企画は終わりましたが

現代美術館での「三沢厚彦 ANIMALS in 熊本」は

9月3日(日)まで開催されています。

さらに、学芸員さんとまわれる「ギャラリー・ツアー」は

8月27日(日)と9月3日(日)のあと2回、残っています!

 

もう残りわずかな期間ですので

興味をもたれた方、ぜひ熊本市現代美術館まで

足をお運びください♪

 

 

 

上野 明日香

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